道との遭遇

「道との遭遇」展が、ROADSIDERS' weekly 2017年1月14日号で紹介されました。ありがとうございます!


 

道との遭遇・仙台編 txet by 都築響一

 

仙台国分町のはずれに『Holon』という小さなギャラリーがあるのをご存じだろうか。スケートボード・ショップ『gostraight』の端っこを区切ったような、廊下に見えなくもない狭小スペースだ。

本メルマガでは2012年10月3日号で紹介したスケーター/グラフィティ・アーティスト「朱のべん Syunoven」が運営するこのマイクロ・ギャラリーは、2012年のオープン以来これまでさまざまに挑戦的な、非営利というより実に非営利的な企画展を開いてきた。そのholonが4年間の活動の集大成ともいうべき特別企画展『道との遭遇』を開催中だ(1月15日まで)。

映画『未知との遭遇』の原題「Close Encounters of the Third Kind」に倣えば、「Close Encounters with the Street」とも言うべきこのグループ展は、朱のべんを核とする全国のグラフィティ・アーティストたち36名がそれぞれ1点ずつ作品を寄せ合った、小規模ながら貴重なショーケース。それにストリート・アートの大先達でもある仙台のダダカン師と、その「全裸三点倒立」を撮影させてもらった僕の写真も末席に加えてもらっている(ちなみに全参加者のうち、漢字で本名なのは僕ひとりだけ・・・)。

やはり以前に本メルマガで紹介した福岡のKYNEや会津のWOODBRAIN、それに東京のMOZYSKEYなど、すでにグラフィティ界隈では名の知れたアーティストもいれば、新世代の活動家たちもたくさん含まれている。

ひとりひとりの作家に触れている余裕はないけれど、そもそもホロン・ギャラリーと朱のべんは、東京でも京都でもないし、美術館でもコマーシャル・ギャラリーでもない。美術教育を受けたわけでも、専門のキュレーターですらない。仙台の片隅の、友人の店の片隅で、ただのスケーターでありグラフィティ・アーティストであるひとりの男が、こんなふうに、いまストリートを息づかせている(あるいは浸食している)、リアルでエネルギーに満ちたアートを見せてくれていること。ほんとうはこうした企画こそ、メディアテークを名乗る立派な公的施設にやってもらいたいのに。

『道との遭遇』がこのあと巡回する予定は、もちろんない。展示が終われば、また仙台の、会津の、東京の、福岡のストリートに散開していくまでのこと。こんな幸福な「ミーティング」に、次に参加できるのは、いったいいつになるだろうか。